国土交通省は、監理技術者の専任義務を緩和する方向で検討に入った。建設業法では、請負金額3500万円(建築7000万円)以上の工事で監理技術者の専任を求めているが、一定以上の実務経験と知識がある「監理技術者補佐(仮称)」を各現場に専任で配置すれば、監理技術者が複数の現場を兼務することを認める。現場での品質管理、安全管理の代替手段として、ICT技術の活用が見込まれることも検討の背景にある。
監理技術者・主任技術者は、公共性のある施設や不特定多数が利用する施設(戸建て住宅を除くほぼ全ての工事)のうち、請負金額3500万円(建築7000万円)以上の工事で専任での配置を義務付けている。
このうち、主任技術者は、東日本大震災の復旧工事に伴う技術者不足を契機に専任義務を緩和。現在は「現場の相互の間隔が10㌔程度」であることを条件に原則2件程度の工事を兼務することを認めている。
一方、監理技術者の専任には、現在も複数の現場を兼務することは認めていないが、施工データのクラウド化などによるICT技術の開発が進み、複数の現場を施工管理することが以前よりも容易になっている。国交省は、監理技術者が行う施工管理の合理化が可能だとみて、監理技術者の専任配置の緩和を検討する。
監理技術者を兼務する条件には「技士補(仮称)」の活用を検討する。建設業法改正によって創設が見込まれる技士補は、技術検定の学科試験のみの合格者に与える資格。2級施工管理技士として実務経験があり、1級技術検定の学科試験に合格した「1級技士補」を「監理技術者補佐(仮称)」として専任配置すれば、監理技術者自身が複数の現場を兼務することを認める。
監理技術者資格者証の保有者数は減少傾向にあり、今後は高齢化も顕著に進む。1級技術検定の学科試験のみに合格した技士補を監理技術者補佐に登用すれば、若手技術者が早期に責任ある立場で現場に従事できる。
この他、監理技術者の専任を求める工事でも、監理技術者が担う「施工計画の作成」「工程管理」「品質管理」などに支障が生じない難易度の低い工事で、複数現場の兼務を認めることも検討している。