国土交通省宮崎河川国道事務所は、今後30年間の大淀川水系の整備目標や具体的な整備内容等を定めた大淀川水系河川整備計画の変更原案をまとめた。計画対象区間は大淀川水系の国管理区間及び宮崎県・鹿児島県管理区間で、計画期間は概ね30年間。平成28年7月に変更した大淀川水系河川整備基本方針に従い、治水・利水・環境の調和を図りつつ、堤防整備や河道掘削、遊水地整備、既設ダムの有効活用等を実施する。
宮崎河川国道事務所と宮崎・鹿児島の両県が平成18年3月に策定した大淀川水系河川整備計画に関して、計画策定以降に発生した東北太平洋沖地震による津波被害や関東・東北豪雨による浸水被害、また、水防法等の一部改正を踏まえた河川整備基本方針の変更など、河川を取り巻く社会状況の変化を踏まえ、計画の見直しを行う。
変更原案では、河川整備の基本理念に「多様でより豊かな自然環境を未来に継承し、より安心して暮らせる流域の個性ある活力、歴史・文化をさらに発現する大淀川」を掲げた。安全・安心や川と人とのふれあい、清浄な水質、自然環境との調和を念頭に、地域住民及び関係基幹と連携を図りながら、各種施策を推進する。
大淀川水系河川整備基本方針に定めた目標流量を安全に流下させるため、堤防高及び断面が不足している宮崎市高岡町五町や同吉野、国富町嵐田、綾町北俣、都城市乙房町、同下水流町等で築堤を実施するとともに、流下能力が低い都城市金田や同吉尾、同下水流、同高城町有水等で川幅を広げるための引堤を実施する。
また、洪水時の降雨及び河川水の浸透による堤防の不安定化や流出を防止するため、これまでに実施した点検結果や背後地の社会条件等を考慮し、宮崎市高岡町花見や国富町本庄、都城市下水流町、綾町南俣、同入野等に於いて、優先度を検討しながら既設堤防のパイピング対策に取り組む。
必要な河道断面積が確保されていない大淀川、高崎川、庄内川の各区間に於いては、河道掘削や樹木伐開等を実施する。実施にあたっては、多様な動植物の生息・生育・繁殖の場が消失しないよう、掘削形状等に十分配慮するとともに、低水路から高水敷までを緩やかな勾配で掘削するなど、水際の多様性の創出に配慮する。
平成17年9月洪水と同規模の洪水を安全に流下させるため、大淀川上流部及び下流部に遊水地を整備するとともに、既設の岩瀬ダムを有効活用して洪水調節機能を増強することについて、関係機関等と調整を図りながら、調査・検討の上で諸元等の詳細を決定し、必要な対策を講じる。
洪水流下の支障となっている橋梁のうち、堤防整備と一体となって改築を行う必要のある▽乙房橋(都城市吉尾町)▽今平橋(都城市乙房町・吉尾町)▽鶴崎橋(都城市下水流町)▽巣立橋(都城市下水流町・高崎町縄瀬)―などの橋梁に関しては、各橋の施設管理者と連携して必要な改築を実施する。
新たに内水対策の必要性が高まった地区等に関しては、被害の規模や浸水頻度、土地利用状況等を勘案し、発生要因及び処理方策を調査・検討し、必要に応じた対策を講じる。大規模な地震が発生した場合に於いても河川管理施設の必要な機能を確保するため、新別府川の樋門耐震化や樋門自動閉鎖化等に取り組む。
一方で、施設では守り切れない大洪水は必ず発生するとの考えに立ち、施設の能力を上回る洪水が発生した場合に被害の軽減を図るため、危機管理型ハード対策として、越水等が発生した場合に決壊までの時間を少しでも引き延ばすよう、堤防構造を工夫する対策を水害リスクが高い区間等で実施する。
《発表資料》