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大規模構造物にCIM、詳細設計で原則化 国交省

 国土交通省は、2018年度に発注する大規模構造物の詳細設計で原則としてCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)を適用する。将来的には、全ての大規模構造物にCIMの適用を原則化することを視野に入れる。18年度には、設計者によるCIMモデルのオンライン電子納品、関係者によるクラウド上での3次元データ共有も試行。電子成果品を効率的に共有、利活用できる環境整備にも乗り出す。

 直轄事業で17年度にCIMを活用した工事は72件、業務は54件。これまでは、関係者間協議などに限られていたCIMモデル活用の範囲を契約図書や数量算出、受発注者間のデータ共有などに活用に広げるため、18年度から対象工事・業務を拡大する。

 国交省は、3月6日に開いたCIM導入推進委員会で、大規模構造物の詳細設計を原則としてCIMの対象とする方針を示した。大規模な橋梁・トンネル・河川構造物・ダムの詳細設計は、受注者がCIMを適用できる形で発注する。

 受注者には、CIMモデルの将来的な運用を見据え▽契約図書化▽関係者間の情報連携・オンライン電子納品▽属性情報の付与▽数量・工事費・工期算出―といった「要求事項(リクワイヤメント)」の検討を求める。要求事項の実施に必要なソフトウエアの開発要望などを「技術開発提案書」として提出することも求める。

 CIMモデルを効率的に共有・利活用できる環境も整備する。現在は受注者がCD-Rで納品しているCIMモデルは、18年度にオンライン上で電子納品する試行を実施し、「電子納品・保管管理システム」への格納を効率化する。施工段階の関係者(発注者、設計者、測量・調査者、施工者など)がクラウド上でCIMモデルを共有しながら事業を実施する環境も整備する。CIMモデルなどの電子成果品を検索・ダウンロードできるシステムも構築する。

 18年度に建設業団体やベンダーを集め、システムの機能要件を整理する。19年度のシステム開発、20年度の運用開始を目指している。

■契約図書にCIMモデル、二重納品を解消

 国土交通省は、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)モデルを契約図書に活用する際、モデルの作成ルールとなる「3次元モデル表記標準案」をまとめた。CIMモデルを契約図書に活用し、2次元図面との二重納品の解消や施工段階への円滑なデータの受け渡しを狙う。18年度にCIMを活用した詳細設計で表記標準に沿ったモデル作成を求め、19年度にモデルを契約図書に使う試行工事を発注する。

 表記標準は、道路土工、河川土工、橋梁上部工(鋼橋、PC橋)、下部工の4工種で作成し、4月1日から適用する。18年度末には、山岳トンネル、河川構造物(樋門、樋管など)、ロックフィルダム、重力式コンクリートダムに対象を広げる。

 表記標準には、CIMモデルを契約図書に活用する際に必要な、寸法・材質・強度・数量を3次元形状に付与する際のルールを示す。これらの情報は、CIMモデルから切り出した2次元図面(断面図)に表示することにし、切り出して表現できない場合は従来の2次元図面を補助的に活用することも認める。

 表記標準に沿ってCIMモデルを作成することで、現在は2次元図面を使う契約図書にCIMモデルを活用することが可能になる。成果物はPDF形式とし、契約図書としての見読性、真正性、保存性を担保する。18年度に大規模構造物の詳細設計の一部で契約図書として活用できるCIMモデルの作成を求め、19年度に試行工事を発注する。

 同省ではまた、CIMモデルから算出される数量を積算に活用できるよう、土木工事数量算出要領案を改定する。現行の要領は3次元モデルから算出された数量の記載が不十分であるため、土構造、コンクリート構造、鋼構造で、3次元モデルに対応した数量算出方法を示す。4月1日から適用する。

■18年度に水門設備で試行

 国土交通省は「CIM導入ガイドライン案」を改定し「機械設備編」を追加する。水門設備を対象にCIMモデルの作成方法、詳細度などを示しており、2018年度にCIMの試行を開始する。改定したガイドラインは4月1日から適用する。

 昨年3月に策定したガイドラインは、共通編と各分野編(土工、河川、ダム、橋梁、トンネル)で構成し、各構造物のCIMモデルの作成方法、詳細度などを示している。

 ガイドラインに「機械設備編」を新設し、水門設備を対象とする試行事業を実施する。18年度には、同じ「機械設備編」に揚排水ポンプ設備、トンネル機械設備も拡充する。また、今回の改定では「共通編」にある地質・土質調査関係の記述を拡充し、3次元地盤モデルの作成手順、作成・納品時の留意事項を追加する。