建設ネット企画画像 四角 四角

技能者の対応力にも着眼を 技能者能力評価で全建

 全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)が、建設技能者の能力評価について同協会労働委員会に所属する建設会社に12月にアンケート調査を行ったところ、評価のポイントとして「大いに重視する」のは、現場での実践力や応用力など「働きぶり」が最も多かった。一方、2018年度から稼働する建設キャリアアップシステムの能力評価は、技能者の保有資格と経験年数に基づき行う方向。全建は調査結果も踏まえ「技能者の応用力や対応力を重視する現場の実態に合った評価にしていく必要がある」としている。今回の調査でも、保有資格や経験年数などで一律に技能者を評価している会社はなかった。

 労働委員会に所属する17社を対象に調査した。「重視すべき評価のポイント」について、評価対象となる技能者の経験年数に分けて聞いた。

 入職2年前後の経験の浅い技能者を評価する上で「大いに重視する」のは、「働きぶり(現場での実践力・応用力)」が12社(70.6%)で最も多かった。「スキル(施工上の技術・技能)」が7社(41.2%)、「免許・資格」と「知識(施工方法などの知識)」がそれぞれ6社(35.3%)で続いた。「学歴」や「研修・教育訓練の受講歴」への評価は低かった。

 入職10年前後の技能者では、「働きぶり」を「大いに重視する」会社はさらに増え14社(84.4%)に上った。「スキル」が13社(76.5%)、「免許・資格」と「知識」がそれぞれ12社(70.6%)で次いだ。

 50歳前後のベテランに対して「大いに重視する」のは、「スキル」と「知識」がそれぞれ13社(76.5%)で最も多かったが、「働きぶり」も11社(64.7%)で次いだ。以下、「免許・資格」9社(52.9%)、「後進の育成・指導力」8社(47.1%)となった。

 全建の星直幸理事は「建設業の現場では、現場で発生する課題への対応力などを技能者に期待している。“技能の奥行き”としてこれをきちんと評価していく必要がある。いい仕事をしている技能者の待遇改善を、かたちとして見えるようにしていかなければならない」と話す。

 建設業振興基金が運営主体となって10月から本格稼働する建設キャリアアップシステムでの技能者の能力評価は、客観性を重視し、保有資格と経験年数に基づき一律に4段階で行う方向だ。

 しかし海外では現場での対応力や応用力を評価項目に入れている事例もある。欧州の技能者評価制度EQFは、「知識」「スキル」に加え、異なる職場環境など状況に応じて知識やスキルを使いこなす能力である「コンピテンス」の3項目によって、8段階で評価している。

 星理事は、現場の実態に合った評価制度を「時間を掛けてでも作っていくべきではないか」と話している。

■資格・経験一律評価はゼロ

 全国建設業協会の今回の建設技能者の能力評価に関するアンケート調査では、各企業が現在行っている能力評価制度などについても聞いた。能力評価制度を現在持っている企業は17社のうち9社(52.9%)だった。

 能力評価制度を持つ企業の評価対象者は「自社の直用技能者のみ」と「自社の直用と協力会社など下請けの技能者」とする会社がそれぞれ2社、「自社の直用と協力会社など下請けの技能者に一人親方を含む」が1社。その他の4社は「一人親方を含むケースも含め、協力会社など下請けの技能者のみ」。このうち3社は現場の推薦などよって優秀な職長などを選んで評価していた。

 また、評価結果が手当の支給など処遇につながるか聞いたところ、9社のうち7社が「処遇に差が出る」と回答した。

 さらに評価の仕組みについては6社が「保有資格・経験年数などに、現場での実態を加味して評価」、2社が「現場での就業の実態に応じて評価」とした。1社は「作業のスピードや段取りなどによって習得スキルを評価するとともに、現場貢献度などを客観的に評価」している。「保有資格・経験年数などで一律に評価する」という会社はなかった。