国土交通省は11月2日に開いた社会資本整備審議会の道路技術小委員会で、橋梁・トンネルの定期点検見直しに向けた検討を始めた。2014年度に始まった5年サイクルの定期点検は18年度末に一巡する見通しだが、現行制度に対して財政的、技術的な負担を感じる地方自治体が多い。定期点検要領を見直し、損傷度に応じた点検の合理化、近接目視を補完・代替する新技術の活用などを図り、自治体の負担を軽減する。
国交省は、笹子トンネルの天井板崩落事故を受け、2014年7月に全ての道路橋とトンネルを5年に1度点検するよう、道路管理者に義務付けた。17年度末までの道路橋の点検実施率は橋梁が80%、トンネルが71%で、18年度末までに全施設の点検が完了する見通しだ。
池田豊人道路局長は一巡目の点検実施率について「スタート時点では不安もあったが、自治体が歯を食いしばって点検を進めてくれた」と述べた上で「一巡目の実施状況を踏まえた効率化が課題だ」と述べた。
国交省が行ったアンケート調査によると、地方自治体の77.4%が「定期点検の間隔を5年より長くすべき」と回答。「点検内容の合理化」を50.9%、「点検支援技術(カメラ、ロボットなど)の活用」を31.9%の自治体が求めた。
同省は、こうした自治体の意見を受け、一巡目の結果を踏まえた点検の効率化・合理化を検討する。具体的には、一巡目の点検で明らかになった損傷の他、各施設の構造特性に応じて一部の点検箇所を省略する。溝橋、水路ボックス、トンネル目地部などに特化した点検の歩掛りを設け、コストや手間を軽減する。
直轄国道で先行的に導入している点検支援技術の活用も拡大する。ドローンや撮影技術の応用により、近接目視を補完・代替できる新技術の活用環境を整える。
年内に開く次回の道路技術小委員会で、定期点検要領見直しの素案を報告する。各自治体に意見照会も行い、18年度中に要領を見直す。