農林水産省等が行った農業水利施設を活用した小水力発電施設の可能性調査で、「建設費単価が目安となるコストを下回ることが見込まれる」とされた県内の23地区のうち、4地区で工事実施済もしくは実施中、6地区で概略設計実施済であることが分かった。事業の実施主体は、農業水利施設等を管理する自治体や土地改良区等で、事業に必要となるソフト・ハード事業を県が支援する。
農業水利施設の未利用エネルギーを活用する小水力発電は、持続可能なエネルギー供給や農業水利施設の適切な維持管理を図る上で重要であり、平成28年8月に閣議決定された土地改良長期計画では、農業水利施設を活用した小水力等発電の電力量をかんがい排水に用いる電力量の約3割以上とすることを目標に掲げている。農林水産省農村振興局では、小水力等の利活用を推進するための各種施策を講じている。
宮崎県に於いても、低炭素・循環型社会の実現や過疎化等が進む農村地域の活性化、農業用水利施設の維持管理費低減等を目的に、農業用水を利用した小水力発電の導入促進を図る。平成24年度には県単独事業である「小水力発電等農村地域導入支援事業」を創設。実施主体が小水力発電施設の整備を検討し、整備する際にはソフト(地元調整~詳細設計)からハード(施設整備)までに同事業を活用できる。
農水省の補助事業等を活用して小水力発電施設の導入可能性調査を実施した地区のうち、県内で建設費単価が目安となるコストを下回ることが見込まれる地区は23。今年10月時点で、川の内地区(諸塚村)や大人地区(日之影町)など3地区で工事実施済、田代地区で工事実施中、大内FP(川南町)や広沢ダム発電所(綾町)など6地区で概略設計実施済となっている。
同事業を活用して平成29年に運転を開始した諸塚小水力発電所(諸塚村)では、売電収益を農業用施設等の維持管理費に充てるなどして、施設の老朽化対策に貢献することが期待される。同じく大日止昴小水力発電所(日之影町)では、施設等の維持管理費のほか、環境整備や伝統芸能の活動費等に充てるなど、地域活性化への貢献も期待される。
宮崎県が公表した小水力等発電可能性調査結果は次のとおり(①所在地②農業水利施設等③施設等管理者④最大出力⑤備考、最大出力は調査時の見込み)。
▽大内FP=①川南町②大内幹線水路③尾鈴土地改良区連合④35㌔㍗⑤概略設計実施済
▽切原ダム調圧水槽=①川南町②切原ダム③尾鈴土地改良区連合④49㌔㍗⑤概略設計実施済
▽切原ダム(河川維持流量)=①川南町②切原ダム③尾鈴土地改良区連合④160㌔㍗⑤概略設計実施済
▽大内調圧水槽=①川南町②十文字支線水路③尾鈴土地改良区連合④80㌔㍗
▽西光原調圧水槽=①川南町②十文字支線水路③尾鈴土地改良区連合④48㌔㍗
▽広沢ダム発電所(第2発電所)=①綾町②広沢ダム③大淀川左岸土地改良区④199㌔㍗⑤概略設計実施済
▽天神ダム(河川維持流量)=①宮崎市②天神ダム③宮崎市④114㌔㍗
▽市上=①串間市②蓬ヶ野井堰③市上水利組合④240㌔㍗
▽関之尾=①都城市②南前用水路③庄内土地改良区④110㌔㍗
▽木之川内ダム(河川維持流量)=①都城市②木之川内ダム③都城市④157㌔㍗⑤概略設計実施済
▽梶山=①三股町②梶山用水路③梶山土地改良区④39㌔㍗
▽田代(陣ノため池)=①えびの市②池島川の上流部③田代土地改良区④14㌔㍗⑤工事実施中
▽黒沢津(環野集落下)=①小林市②湧水③黒沢津土地改良区④44㌔㍗
▽黒沢津(環野FP付近)=①小林市②湧水③黒沢津土地改良区④137㌔㍗
▽切原ダム(全放流量)=①川南町②切原ダム③尾鈴土地改良区連合④108㌔㍗
▽川の口=①諸塚村②下長川の上流部③川之口水利組合④20㌔㍗⑤工事実施済
▽速日の峰=①延岡市②速日の峰農業用水路③速日峰土地改良区④153㌔㍗
▽小崎=①日之影町②二又川の上流部③小崎用水組合④218㌔㍗
▽大人=①日之影町②大人用水路③大人用水組合④50㌔㍗⑤工事実施済
▽三ヶ所=①五ヶ瀬町②三ヶ所用水路③三ヶ所土地改良区④130㌔㍗
▽大淀川右岸(天神ダム)=①都城市②天神ダム③宮崎市④114㌔㍗⑤概略設計実施済
▽大淀川右岸(天神ダム2)=①都城市②天神ダム③宮崎市④104㌔㍗
▽尾鈴地区(青鹿ダム)=①川南町②青鹿ダム③尾鈴土地改良区連合④47㌔㍗⑤工事実施済。