10年後の建設業を見据えた提言『建設産業政策2017+10』がまとまって2カ月がたち、国土交通省は提言の具体化に向けた施策を立て続けに打ち出している。7月の中央建設業審議会で、経営事項審査と標準請負契約約款を改正。社会保険加入対策の強化を図ったここに続き、8月には「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」を決定した。秋の臨時国会の労働基準法改正を見据え、建設業の働き方改革の関連施策が優先され、2018年度概算要求でも関連予算の要求が目立った。
建設産業政策会議がまとめた『建設産業政策2017+10』は、将来にわたり建設業が現場力を維持するため、制度インフラを再構築して働き方改革や生産性向上に取り組むよう提言したもの。 同会議の座長を務めた石原邦夫東京海上日動火災保険相談役は、7月4日の石井啓一国交相への手交の際に「スピード感を持って制度的な裏付けを検討してほしい」と述べるなど、提言の具体化を急ぐよう求めていた。
提言から1カ月を待たず、国交省は7月25日に開いた中建審総会で、建設工事標準請負契約約款を改正。請負代金内訳書に法定福利費を明示することを標準化し、官民の発注者に実施勧告も行った。先行して請負契約書を改正した直轄工事では、10月1日から請負代金内訳書に法定福利費を明示することを義務付ける。
7月の中建審では経審改正も了承された。社会保険未加入や法令違反に対する減点措置を厳格化したことに加え、建機保有に対する加点方法の見直し、防災協定を結ぶ企業に対する加点幅の拡大を図った。2018年4月に施行される予定だ。
建設業の長時間労働是正に向け「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」も8月28日に関係省庁で申し合わせ。民間工事にガイドラインが浸透し、適正な工期が設定されるよう、鉄道・電力・ガス・不動産の4分野で推進体制を構築することも決めた。既に鉄道分野では、受発注者を集めた連絡会議が立ち上がっている。
8月29日に発表された概算要求でも、提言関連の施策に予算を重点配分する姿勢が示された。働き方改革関連に加え、専門工事業評価制度の構築、多能工化・協業化モデル事業なども提言を踏まえて予算を要求した。
今後は、制度改正を伴う施策の実現も目指していく。『建設産業政策2017+10』には、適正な工期設定の実効性を高める注文者への勧告制度、個人発注者の保護、地域建設業と市町村との連携強化などの他、技術者制度の見直しにより、技術者資格の確認制度や主任技術者の配置義務緩和なども盛り込まれている。