厚生労働省の人口動態統計(確定値)から、2016年の1年間に典型的なアスベスト(石綿)疾患とされる中皮腫によって死亡した人の総数が1550人に上ったことが分かった。内訳は男性が1299人、女性が251人。死亡者の総数は20年前(1996年)の2.7倍に急増、アスベストによる健康被害が社会問題化した、いわゆる“クボタショック”の翌年の2006年と比べても1.47倍に増加している。
47都道府県の中皮腫による死亡者数を見てみると、大阪府が169人で最も多く、次いで兵庫県が138人、東京都が130人、埼玉県が94人、神奈川県が88人、北海道が86人などとなっており、死亡者が0人の県は1県もない。
中皮腫を発症した原因は、そのほとんどがアスベストを吸引したためだと考えられており、アスベストにばく露してから中皮腫を発症するまでの潜伏期間は、個人差はあるものの20~50年とされている。
05年6月、クボタ旧神崎工場(兵庫県尼崎市)周辺住民らのアスベスト粉じん飛散・ばく露による深刻な健康被害の発生が報道されたことを契機に、アスベストの危険性が社会問題化したことを受けて、政府はアスベスト総合対策を策定。06年に労働安全衛生法、大気汚染防止法、建築基準法などアスベスト関係法令が相次いで改正され、アスベストを使用した製品の製造・使用が中止された。それ以降、アスベスト対策の“主戦場”は、アスベスト含有建材を使用した可能性のある建築物・工作物の解体(除却)となっている。
一方で、解体工事などの建設作業には従事していなかったものの、吹付けアスベストのある建物などの中で就労していた人の中にも中皮腫や肺がんになった人がすでに100人以上いることが、厚労省の労働災害補償保険の事業所調査と石綿健康被害救済法に基づく特別遺族給付金の支給状況などから明らかになっている。