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適正工期ガイドライン 関係省庁が申し合わせ

 政府の「建設業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」は8月28日、「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」についての申し合わせを行った。建設業に時間外労働の上限規制を適用することを踏まえ、全ての建設工事でガイドラインに沿って適正工期を設定する認識を共有。関係省庁はそれぞれの所管分野で受発注者に適正工期の設定を促し、上限規制に抵触するような長時間労働を是正するよう働き掛ける。受注者(元請け)に対しては、ICT活用などによる生産性向上、下請け契約における適正な工期設定も求める。

 連絡会議は▽内閣府▽公正取引委員会▽総務省▽財務省▽文部科学省▽厚生労働省▽農林水産省▽経済産業省▽国土交通省▽防衛省―で構成。各省庁が発注する公共工事では、ガイドラインに沿った適正な工期設定を徹底、地方自治体・独立行政法人にも対応を強化するよう要請する。

 さらに、鉄道・電気・ガス・不動産など主要な民間発注者団体にガイドラインを周知し、適正工期への協力を求める。

 ガイドラインではまず、時間外労働の上限規制適用に向けた受発注者の役割を記載。元請けには、時間外労働の上限規制に抵触するような、長時間労働を前提とする不当に短い工期を排除するとともに、民間発注者に工期設定の考え方を適切に説明することを求めた。

 発注者には、設計図書で施工条件を明確にし、工事の手戻りで後工程の長時間労働につながるような事態に陥らないよう要請する。

 具体的な工期設定に当たっては▽休日▽準備期間(労務・資器材の調達、調査・測量)▽後片付け期間(施工後の自主検査、清掃)▽作業不能日数(降雨、降雪、出水期)▽手続き期間(用地買収、建築確認、道路管理者との調整)―などへの考慮を促す。

 土木工事では、国交省の「工期設定支援システム」、建築工事では、国交省の「公共建築工事における工期設定の基本的考え方」や日本建設業連合会の「建築工事適正工期算定プログラム」を参考とした工期設定を求める。週休2日を確保して工期を設定した場合は、直轄工事で導入した共通仮設費と現場管理費の補正措置導入も促した。

 また、工期変更に伴うコスト増を受注者に負担させることが建設業法第19条の3の「不当に低い請負代金の禁止」に違反する恐れがあるとも記載。工期設定に伴うコスト増を社会保険料や安全衛生経費などの必要経費から差し引くことも、建設業法第19条の3に違反する恐れがあるとしている。

 関係省庁は今後、各発注者の実態や長時間労働是正に向けた取り組みをフォローアップし、必要に応じてガイドラインを見直す。

【用語解説】「時間外労働の上限規制」=政府は3月にまとめた「働き方改革実行計画」を踏まえ、秋の臨時国会で労働基準法を改正し、時間外労働に罰則付きの上限規制を課す考え。これまで上限規制の適用除外となっていた建設業は、改正法施行後5年の猶予期間を経て罰則付き上限規制を適用する。労働基準法の法定労働時間(1週間40時間)を超える時間外労働の限度を原則月45時間かつ年360時間とし、違反には特例を除いて罰則を科す。労使が合意して三六協定を結ぶ場合でも、時間外労働時間の限度を年720時間(月平均60時間)とする。