国土交通省は、多能工を育成する中小建設業向けのガイドラインを2018年度に策定する。異なる工種の作業を1人で担う多能工には、工期短縮、手戻りの防止、外注費削減などの効果が期待できる反面、育成のコストや期間など企業負担が重く、建設現場での活用が広がっていない。ガイドラインで多能工の育成・活用手法を明示し、中小建設業に建設現場の生産性向上を促す。
多能工は、複数の異なる作業、工程をこなせるマルチスキルを持つ技能者。工種ごとに専門工事業や技能者がいる建設現場において、複数工種の作業をこなす多能工を配置すると、工種の入れ替えが生じないため、工期短縮や手戻りの削減に効果があるとされている。
多能工を雇用する企業にとっては、人材の有効活用による繁閑調整、複数工種を受注する機会の拡大といったメリットがある。技能者にも、配置される現場が広がり、賃金が向上する効果などが期待できる。
ただ、多能工は、単一の工種の技能者に比べ、育成手法が確立されていないことに加え、企業側には「多能工が必要な現場がない」「作業効率がかえって低くなる」といった意識も根強くある。多能工を育成しても、複数の工種を受注するには複数業種の建設業許可も必要だ。
国交省は、ガイドラインを策定することで多能工の育成・活用手法を浸透させるとともに、建設業界の多能工に対する意識転換を促す。18年度に多能工の育成・活用に連携して取り組む異業種の複数企業に支援措置を講じ、好事例を収集。支援措置の成果を踏まえてガイドラインをまとめる。ガイドラインは建設業団体を通じて普及させる。