国土交通省は7月4日、地下工事の安全対策を議論してきた有識者会議に、官民が所有する地盤情報の収集・共有、品質確保、オープン化を提言する答申案を提示した。答申案では、公共工事における地盤情報の収集・共有を徹底するとともに、ライフライン工事は占用手続きに合わせて、民間工事は発注者の同意を得た上で情報を共有する仕組みの構築を求めた。同省はこの答申を踏まえ、法制化も視野に具体策を検討する考えだ。
国交省は、福岡市の七隈線延伸工事で発生した大規模な道路陥没事故を受け、今年2月に「地下空間の利活用に関する安全技術の確立に関する小委員会」を設置、地下工事の安全対策について検討してきた。
答申案では、地盤情報が十分に把握されていないことが施工不良や大事故を引き起こしていると問題視。過去に収集した地盤情報を面的に共有し、地質調査などの効率性を高める必要性を指摘した。
その上で、公共工事、ライフライン工事(電気、通信、ガスなど)、民間の建築工事について▽ボーリング柱状図・N値▽土質試験結果▽物理探査データ▽地下水の計測深度・水位―などを対象に、国が情報をオープン化する仕組みを構築するよう提言。
公共工事では、国交省直轄事業や一部の地方自治体で、地盤情報をデータベースに蓄積し、共有化する取り組みが進んでおり、こうした取り組みを他の発注者に徹底することを求めた。ライフライン工事では、行政に対する占用手続きの際に地盤情報を収集することを制度化。発注者の同意を条件に民間工事での情報収集と共有化も図るべきとしている。
また、地盤情報の品質を確保するため、直轄事業で配置を義務付けている「地質調査技士」などの有資格者を活用するとした。公共工事では、地質調査を実施する際に有資格者の配置を原則化するとともに、民間工事やライフライン工事もこれに準じた対応を求めた。
地盤情報を蓄積するプラットフォームを構築する際には、調査の品質に関するランク分けを行った上でオープン化。民間工事などで、有資格者の配置にインセンティブが働くようにする。