「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会工事安全衛生対策協議会(座長、堀内詔子厚生労働大臣政務官)」は25日、本年度最初の会合を開き、大会施設工事の安全衛生対策の実施状況と労働災害の発生状況を確認した。「海の森水上競技場整備工事」などをモデルケースとして、優れた安全衛生対策の取り組みについて情報を共有。施設整備に従事する労働者に過度の負担が掛からないよう、発注者と受注者がそれぞれの立場で労働時間の管理にも留意していくことを申し合わせた。
冒頭、堀内政務官は、新国立競技場(オリンピックスタジアム)の建設工事従事者が自殺し、遺族が労働災害補償保険給付を申請していることに触れ、「故人のご冥福をお祈りしたい。本件は労働基準局で調査が進められる」と述べ、「引き続き安全衛生対策を推進してもらうと同時に、労働時間の適正な管理・短縮に努力してほしい」と協議会の構成員に要請。
これを受けて、新国立競技場の発注者である日本スポーツ振興センターをはじめとした構成員の代表者らは、それぞれ故人への弔意と、労災保険の給付を申請する事案が発生したことに遺憾の意を示し、過重労働や長期間労働の改善・防止に取り組む考えを示した。
日本建設業連合会(日建連)安全対策本部長の竹中康一氏は、過重労働とならない労働時間管理の重要性を指摘。「元請けとして長時間労働の是正を指導していきたい」と述べた。
協議会の事務局を務める厚生労働省は、2017年7月現在稼働中の「海の森水上競技場整備工事」など6件の大会施設工事の全労働者の延べ実労働日数が10万1675日、全労働者の延べ実労働時間数が81万6854時間となっていることや、安全衛生水準の指標の一つである「度数率」がゼロであることなどを報告。
また、東京港における工事用船舶の航行安全対策や設計段階の施工技術検討業務でのリスクアセスメントの実施など、発注者が実施している安全衛生対策の中でも、特に優れた取り組みについて情報共有を図った。
この日の協議会を堀内政務官が総括し、「労働災害があってはならない。過重な長時間労働が生じないよう、元請けと下請けが一丸となって適正工期の確保・安全衛生対策の推進に尽力してほしい」と要請。「厚労省としても国土交通省など関係機関と連携し、指導・監督に努めていく」考えを示した。