国土交通省の「適正な施工確保のための技術者制度検討会」の報告書では、監理技術者の配置要件と技術者の専任要件の見直しについて「引き続き議論が行われることを期待したい」と記載するにとどめた。検討会では、専任要件に工事の難易度や工期など、金額以外の要素を追加する方向で検討したものの「それぞれ一長一短があり、結論を得るまでは至らなかった」としている。
現在、監理技術者の配置要件は下請け契約の請負代金4000万円以上(建築は6000万円以上)、主任技術者・監理技術者の専任要件は工事請負代金3500万円以上(建築一式7000万円以上)とされている。
2016年6月に中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会がまとめた中間報告では、請負金額が一定金額以上であっても、難易度の低い工事や、材料費が大半で現場作業が少ない工事では専任は不要ではないかという意見があり、請負金額以外の要素を加味して専任要件を設定する必要性を指摘していた。
技術者制度検討会の報告書では、金額によらない基準の導入について幅広く検討したものの、結論を出すには至らなかった。ただ、生産性向上を図る観点からも、優秀な技術者が複数の現場を兼務できるようにする技術者要件の緩和は妥当だとし、引き続き議論を深めることを求めた。
ただ、安易に兼任を認めることが、特定の技術者に業務が集中することにつながり「働き方改革に逆行してしまう恐れがある」とも指摘。制度の緩和が品質の低下や不良不適格業者の参入を招かないよう、ICT技術による品質管理・安全管理など、代替手段を導入することにも留意するよう求めた。