国土交通省は、社会保険未加入対策の一環で、全国の建設業許可業者を対象に法定福利費と賃金の支払い実態を調査する。「小規模な市町村が発注する工事や民間工事で法定福利費が支払われない」「公共工事設計労務単価の上昇が技能労働者の賃金に反映されていない」といった声に応えるため、許可業者1~2万者の支払い実態を調査し、その後の未加入対策に反映させる。早ければ7月にも調査票を配布する。
2012年度から進めてきた社会保険未加入対策によって、許可業者の加入率は上昇したものの、社会保険に加入した企業には、発注者や元請け、上位下請けから法定福利費が支払われず、社会保険料が経営を圧迫しているといった声や、社会保険料の支払いだけで余裕がなく、技能労働者の賃上げができないといった声が上がっている。
厚生労働省が行っている賃金構造基本統計調査でも、技術者らを含めた「建設業男性全労働者」の年収は4年連続で上昇しているが、技能労働者も含めた「建設業男性生産労働者」の年収は16年度に4年ぶりに下落に転じ、約15万円減少した。
国交省は、17年度に社会保険未加入対策を強化する方針を打ち出している。法定福利費と賃金の支払い状況についても、11月までにまとまる調査結果を踏まえ、新たな対策を検討する。
調査対象は、許可業者の中から1~2万者を抽出。法定福利費については、発注者から元請け、元請けから下請けへの支払い状況を確認する。合わせて、下請け企業が雇用する技能労働者に支払う賃金の現状も聞く。調査票を回収し、公共工事と民間工事、元請けの企業規模、地域、職種などによる支払い傾向の違いを分析する。
また、社会保険に未加入の企業・作業員について、地域・下請け次数・職種・年齢などの属性で整理し、傾向を分析する。