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公共建築の円滑化で手引き 基本設計の精度確保を

 国土交通省は6月12日に開いた有識者懇談会に、「地方公共団体における公共建築事業の円滑な実施に向けた手引き(骨子案)」を提示した。骨子案では、基本設計の精度を高めることが手戻りを防ぐことに有効とする一方、通常よりも高い精度で概算工事費を算出する際は、適切な設計報酬を確保する必要性を指摘。また、実施設計段階では、予算の範囲内に工事費を収める厳しい単価設定を避けるよう求めている。

 懇談会では、公共建築工事の発注者が市場動向を踏まえて適正な予定価格や発注条件を設定できるよう、自治体向けの手引きを検討している。12日の会合には、これまで自治体、建築関係団体、建設業団体に行ったヒアリングを踏まえ、手引きの骨子案が示された。

 骨子案では、公共建築が建築市場全体に占める割合は極めて小さいと分析。例えば、メーカーの見積もりを参考にする見積単価が直接工事費に占める割合は、建築工事で2割、設備工事で5割と土木工事に比べて大きく、発注者が市場の実勢価格を的確に把握する必要があると指摘した。

 こうした現状認識を示した上で、建築事業の各段階の課題と発注者に求められる対応を整理。企画段階では、この段階で見積もられた工期・工事費の精度が低いことが意識されないまま、その後の設計条件になっていることを問題視した。

 基本設計段階では、設計成果の精度を高めることが修正設計などの手戻りを防ぐことに有効とした上で、通常要求される精度を超えて概算工事費を算出する場合、適切な設計報酬を確保する必要性があると指摘した。実施設計では、基本設計以降の状況変化が生じた場合に、改めて発注条件を整理することを求めている。

 積算段階では、予算規模と設計内容が乖離(かいり)しても、予算の範囲内に工事費を収めるため、一部で実勢価格を無視した予定価格が設定されている。契約後の施工段階では、積算数量の受発注者間の食い違いを解消するため「入札時積算数量書活用方式」の導入を推奨した。

 国交省は、7月にも開く次回の会合で手引きの内容を固める方針だ。