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法定福利費、内訳明示を義務化 標準契約約款を改正

 国土交通省は5月8日、「建設業社会保険推進連絡協議会」の初会合を開き、社保未加入対策の目標年次である2017年度の追加対策について報告した。この5年で加入率が大幅に上昇した一方、未加入企業が価格競争で有利になるといった指摘を踏まえ、公共工事・民間工事・下請け工事の「建設工事標準請負契約約款」を今夏に改正する方針を提示。元請け・下請けが提出する請負代金内訳書に法定福利費を明示することを義務付ける他、公共工事で未加入企業(2次以下含む)を排除する規定なども設ける。

 目標年次の到来後も業界一丸で対策を推進する姿勢を打ち出すため、「社会保険未加入対策推進協議会」の名称を「建設業社会保険推進連絡協議会」に変更。会長には、引き続き芝浦工業大学の蟹澤宏剛教授が就いた。

 12年度の対策のスタートから、加入率(公共事業労務費調査)は、この5年で企業単位が12ポイント増の96%、労働者単位が19ポイント増の76%と一貫して上昇している。ただ、社会保険料の負担が技能労働者の賃金上昇を抑制しているといった指摘や、社会保険料の負担のない未加入企業が価格競争で有利になるといった加入企業からの不満が上がっている。

 こうした声を踏まえ、国交省は8日の協議会に17年度に実施する追加対策を報告。この中で、夏に中央建設業審議会を開き、公共工事、民間工事、下請け工事の標準約款を改正する方針を示した。

 改正では、受注者が作成し、発注者に提出する請負代金内訳書に法定福利費を内訳として明示することを義務化する。まず、元請け・下請け間や下請け・下請け間に適用する下請け約款を先行的に改正することを検討している。発注者が検査合格後に元請けに支払う請負代金に法定福利費を盛り込むことも明記する。

 公共工事の契約約款では、直轄工事で2次以下の下請けを排除する措置が始まったことを受け、元請けに未加入の下請け企業(2次以下含む)を排除する規定を設ける。

 公共工事では、特に自治体発注工事で対策を徹底する。直轄工事で予定価格を積算する際に現場管理費に計上する法定福利費(事業主負担分)が、自治体発注工事に計上されていないとの指摘があるため、まず入札契約適正化法に基づく調査で実態を把握。適切に計上していない自治体名は公表する。

 さらに、都道府県が参加する会議を29日に立ち上げ、未加入企業の排除措置や法定福利費の適切な計上を要請。6月からは、公共工事の発注者を対象とする説明会も開く。

 この他、企業参加の「社会保険加入推進会議」を都道府県単位で設置し、標準見積書の活用、法定福利費の支払い、作業員の加入指導といった行動基準を参加企業に採択してもらう。

■用語解説―建設工事標準請負契約約款

 建設工事の請負契約における当事者間の具体的な権利義務の内容を定めるもので、公共工事の発注者・元請け間の「公共工事標準請負契約約款」、民間工事の発注者・元請け間の「民間建設工事標準請負契約約款(甲)」、「同(乙)」、下請け工事用の「建設工事標準下請契約約款」がある。

 中央建設業審議会が作成し、各発注者に約款の使用を勧告する。直近では2010年7月に改正されている。

 公共工事では、直轄工事の工事請負契約書が公共約款をベースに作成されるなど、多くの発注者に使用されている。民間工事の約款には、建築関係団体などによる「民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款」もある。標準約款の改正により、契約当事者に対し、法定福利費の内訳明示や支払いに強制力を持たせる狙いがある。

《社保未加入対策の追加対策》