国土交通省は、5月26日に開いた有識者会議に、地下工事の安全確保に向け、官民の情報共有の推進を柱とする論点整理を提示した。官民が持つ地盤や地下水の情報を一元的に集めたデータベースを構築するとともに、専門知識を持つ技術者が調査を担い、DBで共有する情報の品質を確保することを提案。地下埋設物の正確な位置を把握できるよう、施設管理者間の情報共有の拡大やレーザースキャナを活用したデータの3次元化を推進するなどとした。
国交省は、福岡市の七隈線延伸工事で発生した道路陥没事故を受け「地下空間の利活用に関する安全技術の確立に関する小委員会」を設置。関係団体などへのヒアリングやアンケート調査の結果を踏まえ、26日の小委員会に論点整理を報告した。
地盤情報については、国交省、全国地質調査業連合会、一部の地方自治体などがそれぞれDBを構築し、公開している。自治体の求めに応じ、地盤情報を提供する民間事業者も一部にいる。論点整理では、地下水情報も含め、これら官民が所有する情報を一元的に閲覧できるDBの構築を提案した。DBで共有する地盤・地下水情報の品質を確保するため、資格を持つ専門技術者が調査を担う必要性も示した。
各事業者が地盤調査や公表されている地盤データを使って行う地盤のリスク評価も、専門技術者が担う仕組みを整える。把握した地盤リスクを情報共有システム(ASP)で確実に伝達する仕組みも構築する。
地下埋設物の位置は、各事業者が工事ごとに試掘調査を行って把握しているが、管理者が地下埋設物の位置情報を共有することで、試掘調査などの手間を省く。把握した情報を速やかに修正できるよう、レーザースキャナを活用してデータの3次元化を図る。
この他、地下埋設物や地下空間の管理者が、老朽化に伴う亀裂・破損状況、更新時期、路面空洞情報を共有する協議会などを設ける。地下工事の安全性向上に役立つ▽詳細な液状化ハザードマップの策定▽地中探査技術高度化▽地盤情報の3Dマップ化―などを積極的に進めることも提案した。
小委員会では、今回の論点整理を踏まえ、6月中に提言をまとめる予定。