国土交通省と厚生労働省は5月15日、「建設工事従事者安全健康確保推進専門家会議」を開き、建設職人基本法に基づく基本計画案を提示した。計画案では、建設工事従事者の安全・健康を確保するため、政府が講ずべき施策を列挙。安全衛生経費の実態を把握した上で、経費が適切・明確に支払われる実効性ある施策を検討するとした。また、一人親方に対して、労災保険の特別加入制度の活用を促進する。
8日まで行ったパブリックコメントに集まった193件の意見を踏まえ、基本計画案として専門家会議に示した。基本計画は、15日の専門家会議などでの議論も踏まえ、6月中に閣議決定する。
基本計画案では、建設業の労働災害の発生率は全産業平均の2倍に上ることを重く受け止め、政府が実効性ある対策を講じると記載。公共工事、民間工事を問わず、全ての建設工事で、労働安全衛生法令に基づく最低基準の順守とともに、適正な請負代金と工期を定める必要があると記述した。
請負代金に含まれる安全衛生経費については、建設工事の工種・規模・施工場所によって異なる実態を把握し、経費が下請けまで適切に支払われる施策を検討する。安全衛生経費を建設業法に規定する「通常必要と認められる原価」と位置付け、建設業許可部局による立入検査を通じて法令順守を求める。
一人親方が労働安全衛生法の『労働者』に当たらず、同法の直接の保護対象でない中で、15年の死亡者数が81人に上ったことを問題視し、特段の対応が必要だと記載した。労働者と同じように一人親方への措置を統一的に講じる必要性を指摘し、まず一人親方に安全衛生に関する知識習得を支援するとした。
さらに、労働法制上の保護対象でないため労災保険の対象とならない一人親方に対し、労災保険の特別加入制度の任意加入を働き掛ける。元請けを通じて特別加入の実態を把握し、効果的な加入促進策を講じる。
この他、過去の墜落・転落災害の大多数に労働安全衛生規則(安衛則)違反が認められるとして、安衛則に基づく措置の順守を徹底するなど、墜落・転落災害防止対策の充実を速やかに図る。