国土交通省と厚生労働省は4月10日、建設職人基本法に基づく「建設工事従事者安全健康確保推進専門家会議」の初会合を開いた。初会合で、両省が提示した基本計画の骨子案では、2015年の業務中の死亡者数が81人に上る一人親方の安全を守るため、労災保険の特別加入制度への加入を積極的に促進すると明記。中小建設業者の安全衛生管理能力の向上に向け、教育支援などの措置を講じるとも記載した。
建設工事従事者安全健康確保推進法(建設職人基本法)は、建設工事従事者の安全と健康の確保を国の責務と位置付け、法制・財政・税制上の措置を講じることを求めたもの。専門家会議は、関係省庁が3月に設置した推進会議と連携し、国が講じるべき施策を盛り込んだ基本計画を検討する。
専門家会議で示された骨子案では、15年の建設業における死亡災害が327人、一人親方の業務中の死亡者数が81人に上る現状を「重く受け止めなければならない」と記述。特に、労働安全衛生法の労働者に当たらず、直接の保護対象でない一人親方について「特段の対応が必要」と記載した。
具体的には、労災保険の特別加入制度に加入していない一人親方の実態を把握した上で、加入を促進する施策を講じる。元請けが各現場で一人親方の特別加入の状況を把握する必要性も指摘した。
また、下請けへの安全衛生経費の適切な支払いを重要視。建設業法(第19条の3)に規定する「通常必要と認められる原価」に安全衛生経費が含まれるとし、建設業許可部局の立ち入り検査を通じ、法令順守を徹底する。
骨子案ではこの他、建設工事従事者の処遇改善を通じ、技能労働者を中長期的に確保すると記載。具体策としては、法定福利費を内訳明示した見積書の活用で社会保険加入を徹底するとした他、長時間労働の是正や週休2日の推進に取り組む。
国交省・厚労省では、専門家会議での議論を踏まえ、骨子案のパブリックコメントを実施し、5月下旬に開く推進会議で基本計画案を固める方針。これらの議論を踏まえ、政府として基本計画を閣議決定する。