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社保未加入対策をさらに強化 契約書に法定福利費を記載

 国土交通省は、2017年度に建設業の社会保険未加入対策をさらに強化する。未加入対策の目標年次を迎える17年度早々に「建設業社会保険推進連絡協議会(仮称)」を立ち上げ、17年度に実施する新たな対策を報告。これまで見積書に明示するよう求めていた法定福利費を契約書に記載するよう、標準的な契約書を見直すことを検討する。都道府県単位で対策を根付かせるため、建設企業などを集めた協議の場も立ち上げる。健康保険や厚生年金保険への加入を避けるため、意図的に小規模化を図る個人事業主への対策も検討する。

 国交省が12年度から進めている社会保険未加入対策は、17年度をめどに加入率を企業単位で建設業許可業者100%、労働者単位で製造業相当(約90%)とすることを目標に進めてきた。この5年で加入率は大幅に上昇したが、目標達成に向けて対策を強化する。

 法定福利費の確保を巡っては、見積もり段階で法定福利費を明示する標準見積書の活用を呼び掛けてきたが、見積書だけでなく、契約書に法定福利費を記載することを検討する。公共工事・民間工事における標準的な契約書の見直しを視野に、契約書に法定福利費を明記することで、下位の下請けに対する法定福利費の支払いを確実にする狙いがある。

 地方自治体の発注工事でも、確実な法定福利費の計上を働き掛ける。現在、直轄工事の積算では、公共工事設計労務単価に本人負担分、現場管理費に事業者負担分を計上している。このうち、事業者負担分の計上について、自治体の実態を調査する。

 都道府県単位で建設企業が集まる組織体を設け、小規模企業も含めて対策を浸透させる。この中で、社会保険加入の取り組みを各企業で共有する他、加入促進に向けた〝行動基準〟を定めることも検討する。国交省に寄せられる加入指導などの相談が増加しているため、相談体制の充実も図る。

 従業員4人以下の個人事業主は、事業主負担がある健康保険と厚生年金保険に加入する義務がない。加入を避けるため、分社化などで従業員数を意図的に減らす動きが一部で見られるとして、対策を講じることを検討する。

■労働者別は5年で19ポイント上昇

 国土交通省は3月30日、建設業の社会保険加入状況調査(2016年10月時点)の結果を発表した。3保険(雇用保険、健康保険、厚生年金)の加入率は、企業単位で96.1%(前年度比0.5ポイント増)、労働者単位で75.8%(3.8ポイント増)。調査を始めた11年10月時点と比べると、企業単位で12ポイント、労働者単位で19.1ポイント上昇した。

 16年10月時点の公共事業労務費調査で、公共工事に従事する企業・労働者の加入状況を調査した。3保険の加入率は、企業単位で前年度に95%を超え、高止まりの傾向が見られるが、労働者単位では堅調な伸び率を見せた。

 地域別では、企業単位は最も低い栃木県でも88%で、福井県と高知県は100%だった。一方、労働者単位では、石川県、島根県、香川県が90%を超えたが、東京都と大阪府はともに54%と都市部の加入率が低い傾向は変わっていない。

 職種別で見ると、労働者単位で加入率が低いのは、交通誘導警備員B(41%)、橋梁特殊工(58%)、橋梁塗装工(62%)など。給与形態別では、月給制が98%であるのに対し、日給制は日雇い・臨時が18%、日雇・臨時以外が67%と加入率に大きな開きがある。

 また、労働者単位の経験年数別では、「15~19年」「20~24年」がいずれも82%と中堅層の加入率は高いが、「45~49年」が53%、「40~44年」が66%と高齢層の加入率が低い傾向がある。