宮崎県は8日、公共三部発注の建設工事及び建設関連業務を対象としたコスト調査の結果を公表した。調査で得られた平均損益率や収支状況の分析結果に加え、近年の建設業の経営状況等を総合的に勘案し「最低制限価格の水準を見直す状況ではない」と結論付ける一方で、予定価格の適正な設定や適切な設計変更等に努めていく考えを示した。
県発注工事及び業務の収支状況や企業の経営環境等を把握するために実施したもの。平成27年4月以降に公共三部が発注し、平成28年6月までに完成した建設工事及び建設関連業務を対象に、地域性や契約金額等を考慮して調査対象を抽出。回収した建設工事217件、建設関連業務196件の回答内容等を分析した。回収率は77%。
最終契約金額から最終決算金額を引いたものを最終契約金額で除した損益率の平均は、建設工事が8%、建設関連業務が17%。回収した調査結果のうち、マイナス収支となった案件数とその割合は、建設工事が217件中41件(19%)、建設関連業務が196件中25件(13%)となった。
マイナス収支になった理由として、建設工事では「現場条件との乖離」「工期延伸による経費増」「実勢価格との乖離」など予定価格に関するものが6割超を占めた。建設関連業務では「現場条件との乖離」など予定価格に関するものが32%、「工期調整」や「設計変更による減額」など、工期または設計変更に関するものが各20%となった。
一方で、「最低制限価格に近接した額での受注」を要因にあげた件数の割合は、建設工事が13%、建設関連業務が24%となった。これらのアンケート結果を踏まえ、県は「建設工事及び建設関連業務のいずれも、予定価格の設定や設計変更などをマイナス収支になった理由と考えている企業が多い」と分析している。
調査ではこのほか、経営事項審査のデータを基に、県内建設業者の経常利益を分析。経常利益がマイナスの業者の割合は概ね17%前後で推移しており、「コスト調査結果と同様の傾向が見られた」としている。
近年、収益性の経営指標である「総資本経常利益率」が回復傾向にあることや、建設業の倒産件数が減少していることも考慮し、県は「最低制限価格の水準を見直す状況ではない」とまとめ、建設工事で予定価格の概ね90%程度、建設関連業務で同80~85%程度としている現行の最低制限価格を維持する方針を示した。
ただし、「今回のアンケート調査から、予定価格の適正な設定、適切な設計変更等に努めていくことが重要であると再確認できた」ことから、公共工事の品質確保の促進に関する法律の趣旨等を踏まえた上で、「引き続き適切に対応していくこととしたい」と、まとめている。
なお、県はこれまで非公表としていた最低制限価格の算定式(国の算定式×補正係数)を、ことし4月1日から宮崎県公共事業情報サービスで公表する予定でいる。