▲経歴が簡易に証明できるように(国交省資料より)
技能者の就業履歴を蓄積する「建設キャリアアップシステム」の大枠が、昨年12月の官民コンソーシアムで固まった。建設工事に携わる全ての事業者・技能者を対象に、システムへの登録が早ければ今夏にもスタートする。ただ一方で「システムに登録するメリットは何か」「どのような情報を登録するのか」「登録料金はいくらなのか」といった疑問を持つ事業者・技能者も現時点では多いはず。コンソーシアムの事務局を務めた国土交通省土地・建設産業局建設市場整備課にこうした25の疑問に答えてもらった。
Q1.建設キャリアアップシステムを構築する目的は
建設業が将来にわたって、その重要な役割を果たしていくためには、現場を担う技能者の高齢化や若者の減少などという構造的な課題への対策をより一層推進し、建設業を支える優秀な担い手を確保・育成していく必要があります。
そのためには、個々の技能者が、その有する技能と経験に応じた適正な評価や処遇を受けられる環境を整備することが不可欠です。
建設技能者は他の産業従事者と異なり、異なる事業者の現場で経験を積んでいくため、それぞれの技能者の技能が統一的に評価されにくく、現場管理や後進の指導など、一定の経験を積んだ技能者が果たしている役割や能力が、処遇に反映されにくい環境にあります。
こうしたことから、技能者の現場経験や保有資格、講習受講履歴などの就業実績を、技能者に配布するICカードを通じてシステムに蓄積することで、処遇の改善や技能の研鑽につなげる基本的なインフラとして建設キャリアアップシステムの構築を官民一体で進めます。
Q2.システムに登録する技能者のメリットは
現場経験や保有資格などがシステムに蓄積されることから、十分な経験を積み、技能の向上に努める技能者が適正に評価され、それを通じて処遇の改善につながる環境を整えていきます。
将来的には、技能者の処遇の改善に向けて、システムに蓄積された個々の技能者の就業実績などを活用し、技能や職歴に応じた統一的な能力評価基準の策定やきめ細かな賃金体系の検討、さらには労務単価への反映を検討したいと考えています。
また、建退共制度における証紙の貼付状況の確認が確実かつ容易になるとともに、技能者・事業者がおのおのの就業実績や資格取得などの状況を確認することを通して、さらなる技能の研さんや資格の取得につなげていくことが可能になります。
さらに、建設業をいったん離れた技能者が再入職する際には、離職以前に習得した資格・研修や現場経験を客観的に証明できるといった活用が期待されます。
【つづく】