経年に伴う老朽化や狭隘化等が課題となっている西都児湯医療センターに関して、西都市は施設整備に係る基本構想の素案をまとめた。移転新築を最良の選択肢と位置付け、許可病床数である91床を確保できる新病院の延床面積を7700m2程度と試算する。次年度以降、段階的に基本計画の策定や用地の取得、造成工事、基本・実施設計、本体建設工事を進め、平成33年度末までの開院を目指す整備スケジュール案も示した。
識者や市民の代表らで構成する西都児湯医療センター施設整備基本構想懇話会(落合秀信座長)の第5回会合が20日に開かれ、これまでの会合で委員から寄せられた意見等を反映させた施設整備基本構想の素案を担当者が説明した。
昭和55年建設の現病院(RC造3階建延べ3535m2)は、経年に伴う建物や設備の老朽化、狭隘化等を背景に、許可病床である91床のうち65床しか確保できていない状況にある。急性期医療を担う医師不足も課題の一つである中で、医療センターには地域災害拠点病院としての役割を果たすことも求められている。
素案では、西都児湯医療圏に於ける急性期の基幹病院としての機能を維持すると共に、救急機能の充実を図り、新たな医師を呼び込むためには、施設の整備が必須であると指摘。全面改修や現地建て替え、移転新築を行った場合の比較検討のほか、市民アンケートの結果も踏まえ、整備の方向性として移転新築を最良の選択肢と位置付けた。
新病院は、夜間急病センターの維持及び常勤医師の増加による体制の充実、脳疾患・循環器系・消化器系・呼吸器系に於ける専門性の高い急性期医療の提供に加え、安定的な医療提供体制の確立に向けた常勤医師の確保と人材育成、地域医療機関との機能連携及び役割分担を図りつつ、地域災害拠点病院としての役割をその特徴に上げる。
整備計画の中では、基本方針として▽災害時に強く安全・安心な施設▽質の高い医療を提供できる十分なスペースと機能性を持つ施設▽患者やその家族などの視点に立った医療を提供できる施設▽医療環境や技術の変化に柔軟に対応できる施設▽経営効率とともに地球環境にも配慮した施設―であることを示した。
許可病床数の91床を確保できる施設を目指すことから、近年の自治体病院の平均的な1床当たりの面積を参考に、病院本体の延床面積を7700m2程度と試算。災害拠点病院の整備基準に準拠するため、免震構造等の構造形式を検討し、構造体の耐震安全性の目標は▽構造体=Ⅰ類▽建築非構造部材=A類▽建築設備=甲類―を基本とする。
一方、建設場所に関しては現時点で全くの白紙であり、自然災害による影響や公共交通機関の利便性、自動車等の交通アクセス、救急車の運行、病院規模や機能に基づいた敷地の適性、用地取得に際しての地権者との合意形成、適正な土地価格などを視点に、引き続き候補地の選定作業を進めていく。
素案の説明後には、診療体制の充実等に関する意見が委員から寄せられ、魅力ある新病院を整備することで、市民が安心して暮らせる地域づくりや常勤医師の確保に繋がることを再確認した。オブザーバーとして会合に出席した西都市西児湯医師会の松本英裕会長は「大学とも連携しつつ、要請があれば医師会も協力していきたい」と話した。
今後は、今会合までに寄せられた委員の意見を反映させた基本構想案を事務局でとりまとめ、関係各課の幹部職員で組織する施設整備基本構想策定検討委員会で正式に決定し、3月定例市議会に内容を報告する。関連事業費の予算化後、新病院建設に係る基本計画策定業務に着手する方針だ。