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建設&ICT融合へ―「3次元」の活用支える―後編

国土地理院・鎌田高造企画部長に聞く

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▲UAVを操作するランドバードのメンバー

 国土地理院が国土交通省本省に呼応し、i-Construction推進本部を設置して間もなく1年。この間に地理院は何を担い、これから何をしようとしているのか。国土地理院企画部の鎌田高造部長に聞いた。

 ―いま、国土交通省はUAVだけでなく、ICT土工の施工パートも含めたマニュアルの見直しを行っていると聞きます。

 i-Constructionの目指すところは生産性向上ですから、測量に限らずマニュアル類が随時見直されるのは自然なことだと思います。国土地理院としても、測量のプロだけでなく、設計に携わっている人たちや、工事で測量図面を見る機会の多い人たちにも分かってもらえるようなマニュアルにしたいと考えています。工事測量の中には、公共測量の範疇に入ってこなかったようなものもありますが、そのような測量を担う人たちにとっても、きちんと作業すれば真っ当なコストで精度が出るものにしたいと考えています。
 もう一点、UAVにしてもデジカメにしてもまだ発展途上の技術です。だから、仮に現在のデバイスを使った最適のマニュアルができたとしても、3年後のより進んだデバイスに対しては最適なマニュアルとは限りません。マニュアルは、このような観点からも随時見直しすべきものと考えています。

 ―i-Construction全体を視野に入れる必要性は分かりましたが、そのなかで測量業界はどう生きていくべきでしょうか。
 
 i-Constructionの推進について測量業界の立場から言えば、測量技術者がきちんと測量ができて、その結果として測量技術者の居場所が確保でき、さらには新しい人も測量の世界に入ってくる―という循環を作りたいと思っています。
一方、より広い目で見たときには、測量を含む公共事業全体で生産性を向上させることが大事になります。測量の分野がうまくいくことはもちろん重要ですが、公共工事全体がうまくいくこと、いわゆる全体最適も同じように重要です。国土地理院は国土交通省の一員でもありますので、両者がうまくいくよう努めていきます。

 ―測量と工事、両方を熟知している人はなかなかいないと思いますが、測量のプロと工事のプロの双方が考える「品質(レベル)」の概念は共有されているのでしょうか。
 
 測量ではこれまでも精度管理を最も大切にしてきましたが、公共事業全体でも「公共工事品質確保促進法」があり、(受発注者には)品質確保への要求がずっと付いてまわります。測量における精度管理と、公共工事全体における品質管理は、大局的には同じものであるはずです。用語や文化に多少の違いはあっても、良いものを作るという観点から意識の共有は可能ですし、また、共有できなければならないと考えています。

 -TLS(地上型レーザスキャナ)など、UAV以外の面的計測機器もICT土工で利用できる環境整備が進みつつあります。

 MMS(モバイルマッピングシステム)については、2016年春の段階で「作業規程の準則」に位置付けました。地上型レーザスキャナについても2016年度中にマニュアルを作成し、公表するという前提で作業を進めているところです。
LSは、装置の価格も次第にこなれてきており、利用局面が広がりつつあります。そのため、2016年度中に標準的な作業手順をとりまとめ、マニュアルとして公表しようと考えています。これができると、2016年3月末時点では「UAVに搭載した一般の民生用デジカメで撮った写真で地表の三次元データが取れます」としか言えなかったものが、2017年3月末時点では「三脚に乗せた地上型レーザスキャナで、三脚から一定の範囲内であれば三次元点群データが要求精度どおり取れる」ようになります。
 UAVに搭載できるLSも、現時点では価格、重量ともまだ広く普及できるレベルではありませんが、近い将来必ず普及するものと見ています。こちらもいずれ標準的な作業手順を取りまとめる予定です。
国土地理院は、精度を維持しながら生産性を向上させるという観点から、今後も基準類の整備を進めていくつもりです。

【おわり】