国土交通省は20日、社会資本整備審議会建築分科会の建築基準制度部会を開き、建築基準法の改正を視野に入れた提言案(第3次報告案)を示した。既存建築ストックの用途変更に対応するため、既存不適格建築物の最終的な不適格状態解消を前提に、段階的な改修を認める制度を導入する他、小規模建築物の防耐火規制を緩和。さらに、高さ16㍍以下の木造建築物を防耐火規制の対象外とすることや、防火・準防火地域の延焼防止機能を高める基準整備なども提言している。
提言案は▽既存建築ストックの有効活用▽木造建築をめぐる多様なニーズへの対応▽建築物・市街地の安全性及び良好な市街地環境の確保―の3本柱で構成。年明け1月に第3次報告として答申する。
完成後30年以上が経過する既存建築ストックが増加する中、建築基準法の既存不適格に当たる建築物では、現行基準が遡及適用されることが課題になっている。基準適合に必要な排煙設備の設置などで、改修が大規模化するためだ。提言案では、最終的に不適合状態が解消されることを条件に、段階的・計画的な改修による不適合状態の解消を認める制度を導入する。
既存の小規模建築物(延べ200m2未満・3階建て以下)では、避難上の安全性確保を前提に主要構造部の防耐火規制を合理化。就寝用途(旅館、寄宿舎など)は警報設備の設置、老人ホームなどは扉・自動消火設備の設置を条件に規制を緩和する。用途変更に伴う建築確認申請の手続きも簡素化する。
一律に耐火構造を義務付けている木造建築物の規制緩和も図る。木造建築物は、高さ13㍍・軒高9㍍超の場合に耐火構造とすることが求められる。主要構造部に倒壊防止のための設計方法を導入したり、空地を確保することで、高さ16㍍・地上3階建て以下までは防耐火規制の対象外とする(倉庫・車庫は除く)。
市街地全体の防火性能を高める建て替えや改修も後押しする。防火地域・準防火地域で延焼防止性能を高める技術的基準を整備し、基準に適合する建築物を建て替える場合に建ぺい率を上乗せする措置を講じる。
今年2月に埼玉県三好町で発生した倉庫火災を踏まえ、大規模倉庫の所有者らに防火設備などの適切な維持管理を促す仕組みを導入。既存不適格建築物の所有者が予防的に維持保全に取り組めるよう、特定行政庁による指導・助言を法的に位置付ける。