所有者不明土地問題研究会(座長、増田寛也・東京大学公共政策大学院客員教授)は12月13日、この問題の解決に向けて今後必要となる施策についての議論の結果を最終報告書にまとめた。この日会見した増田座長は「(所有者不明土地問題は)今後、『準公有化』へと舵を切っていくことになる」との認識を示した。
研究会は、中核的な施策として、▽所有権を手放すこと(所有権放棄)ができる仕組みと受け皿の設置▽「土地基本情報総合基盤」(仮称)の構築、活用▽現代版検地の実施―の三つを提言。政府と国土交通・法務・総務などの関係省庁にこの報告書を届け、新たな立法措置や法改正に向けた検討を求めていく考えだ。
このうち「所有権を手放すこと(所有権放棄)ができる仕組みと受け皿」については、公的な色彩を持った“新たな組織”を設立し、所有権を放棄された土地が“迷子”にならないようにする必要性を指摘。新たな組織がまず国・地方公共団体に所有者不明土地の所有を打診。所有を応諾した場合は国・公有地となり、所有を希望しない場合は新たな組織が土地の利用、リース、売却のいずれかを選択して実施する。
ただ、所有者不明土地の管理には相当のコストが必要になると考えられるとして、所有権放棄制度の創設には、新たな組織の業務の在り方はもちろん、所有者不明土地の管理に伴う資金調達の手法などについても検討が必要だと指摘した。
「土地基本情報総合基盤」(仮称)は、▽固定資産税▽登記▽戸籍▽住民基本台帳―などの公的な情報を結び付け、土地と所有者に関する情報を網羅する。所有者の探索を容易にするとともに“真の所有者”を特定するための情報基盤として活用する。
また、複数の分野の地理空間情報を重ね合わせることで、所有者確定エリアの優先順位付けや空き家・空き地の活用など、所有者不明土地の戦略的解消にも役立てることができるようになるとみている。
研究会は、土地の所有者に関する情報基盤の必要性を強調する一方で、情報基盤に組み入れる情報とそのオープン化の範囲などについての検討の必要についても指摘。個人情報の扱いに留意し、慎重に検討するよう促した。
「現代版検地」は、一定の集中期間を設定して所有者不明土地を公示し、真の所有者に名乗り出てもらおうというもの。
もし、名乗り出て来る者がいなかった場合は、所有権放棄制度の下に位置付ける“新たな組織”が占有を開始。一定期間が過ぎても真の所有者が名乗り出てこなかった場合は所有権を取得する。
研究会は10月26日、16年時点で国内に存在している所有者不明土地の面積は約410万㌶、単年での経済的損失は約1800億円に上るとの推計を公表。さらに、このまま何の対策も行わない場合、2040年時点での所有者不明土地は、北海道本島の面積にせまる約720万㌶、経済的損失は約6兆円に上るとの予測も公表していた。