国土交通省の建築着工統計調査で、2017年度上半期(4~9月)の新設住宅着工戸数が前年同期比0.7%減の49万6840戸となったことが分かった。相続税対策で好調が続いていた貸家着工が6月から4カ月連続で減少するなど、都市部を中心に着工がピークを過ぎたとみられる他、持ち家も前年同期からわずかに減少した。大型物件の影響でマンションの着工戸数が増加し、分譲住宅の着工戸数は前年同期を4.3%上回った。
新設住宅着工戸数を利用関係別で見ると、持ち家が3%減の14万8266戸、貸家が1.7%減の21万3971戸だった。貸家は6月に20カ月ぶりの減少に転じて以降、4カ月連続で減少している。
分譲住宅は4.3%増の13万1998戸。マンションは6~8月に単月で前年同月を大きく上回り、上半期としても前年同期比で7.2%増の6万1658戸と増加した。一戸建て住宅も1.9%増の6万9156戸と堅調に推移している。
民間非居住建築物の着工床面積は3.5%増の2463万m2。主な使途別で着工床面積が伸びたのは、工場の466万m2(17%増)と倉庫の495万m2(5%増)。前年同期を下回ったのは、事務所の285万m2(2.1%減)と店舗の303万m2(7.2%減)。
用途別では、訪日外国人旅行客の増加で宿泊業が34.4%増の148万m2と好調を維持したものの、9月単月では前年同月比17.8%減と、23カ月ぶりの減少となっている。
■9月の住宅着工は2.9%減
国土交通省がまとめた建築着工統計調査報告によると、9月の新設住宅着工戸数は前年同月比2.9%減の8万3128戸と3カ月連続で減少した。季節調整済年率換算値は1%増の95万2000戸。一昨年から好調が続いていた貸家が4カ月連続の減と失速したことに加え、持ち家と分譲住宅も前年同月の着工戸数を下回った。
利用関係別の新設住宅着工戸数は、持ち家が2.7%減の2万4883戸、貸家が2.3%減の3万7521戸といずれも4カ月連続で減少した。分譲住宅は5.3%減の2万0202戸と4カ月ぶりに減少。内訳は、マンションが9.2%減の8628戸、一戸建て住宅が2.2%減の1万1347戸だった。
地域別では、首都圏が9.9%減の2万8105戸、中部圏が1.6%増の9666戸、近畿圏が0.7%減の1万1354戸、その他の地域が1.5%増の3万4003戸だった。
全建築物の着工床面積は1%減の1165万m2で2カ月連続の減少。このうち民間非居住用は6.6%増の427万m2だった。宿泊業による着工床面積が17.8%減の26万m2となり、23カ月ぶりに減少に転じた。
■9月住宅投資予定額は1兆2373億円
国土交通省は、9月の建築着工統計調査報告に合わせ「住宅投資予定額」を初めて発表した。建築着工統計の着工戸数を金額ベースで推計したもので、建築確認の申請時に把握できる「1戸当たりの工事費予定額」に着工戸数を乗じて集計した。9月の住宅投資予定額は前年同月比3.7%減の1兆2373億円だった。来月以降も、建築着工の発表に合わせて毎月公表する。
1戸当たりの住宅の工事費は、住宅の用途によって大きく異なるため、戸数ベースで投資動向を正確に把握することはできない。国交省が住宅投資予定額の推計時に使用した1戸当たりの工事費予定額(9月分)は、持ち家が2296万円、貸家が917万円、分譲住宅が1561万円となっており、月単位でも変動がある。
このため、着工戸数が増加していても、工事費の低い貸家が占める割合が高いと投資額の伸び率は低くなる。9月の住宅投資予定額と着工戸数を比べても、投資予定額が3.7%減であるのに対し、着工戸数は2.9%減と減少幅に差がある。
利用関係別では、貸家の着工戸数は2.3%減であるものの、住宅投資予定額としては2.2%増の3441億円だった。貸家の着工戸数は減少したものの、工事費予定額が前年同月に比べ4.6%上昇したため、投資額としては前年同月を上回る結果となっている。