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設計図書にCIMモデル 今年度末に基準類整備

 国土交通省は、2017年度末に設計図書にCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)モデルを活用するための基準類を整備する。「土木工事数量算出要領(案)」を改定し、CIMモデルを活用した数量算出・数量確認の方法を明確化。土工や橋梁を対象にCIMモデルの表記標準案もつくる。設計段階で作成したCIMモデルを発注段階で活用し、施工段階に流通できる環境を整える。

 直轄の試行業務で作成されたCIMモデルは、設計成果を可視化し、住民との合意形成や受発注者の打ち合わせなどに活用されている。施工者には参考資料として提供されており、試行業務の設計成果をを施工段階で活用するケースは現時点では少ない。

 国交省は、11月21日に開いたCIM導入推進委員会の「ガイドライン・要領基準改定ワーキンググループ」で、数量算出や属性情報の表記に基準を設けることを説明。契約時の設計図書にCIMモデルを活用できれば、契約後に施工者までCIMモデルが流通するようになり、施工者が3次元モデルを自前で作成する手間がなくなる。

 現在の土木工事数量算出要領(案)でもCIMモデルの活用を認めているが、具体的な数量の算出方法や確認方法を定めていない。CIMモデルでの数量算出に必要な属性情報を明らかにするとともに、CIMモデルと2次元図面で数量を算出した際に生じる誤差と原因を検証し、数量の確認方法を明確にする。

 18年度以降には、CIMモデルを使った数量算出に合わせ、積算基準の見直しも検討する。

 設計図書への活用に必要な、CIMモデルに表記する寸法・注記・注釈の表現方法も統一する。まず、17年度末までに橋梁上部工(鋼橋、PC橋)・下部工と土工で表記標準をまとめ、河川(河川堤防、河川構造物)やダムでも検討に着手する。

 同省はいずれの基準も18年1月中旬までに素案をまとめ、ゼネコンやCADベンダーなどに意見を聞く。関係者の意見を踏まえ、同年3月末までに基準をまとめる。

■CIM導入ガイドラインを年度末に改定

 国土交通省は、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)モデルの作成手順を記載した「CIM導入ガイドライン案」を2017年度末に改定する。水門設備とトンネル付帯設備にCIMを導入できるようにする。地質・土質調査関係の記述を拡充してボーリングモデルを作成する際の手順なども示す。

 今年3月に策定されたガイドラインは、共通編と各分野編(土工、河川、ダム、橋梁、トンネル)で構成。共通編にはCIMモデルの詳細度、設計段階から後工程に引き継ぐ情報、各分野編には調査・設計段階におけるCIMモデルの作成指針などを記載している。

 17年度末の改定では、設備編を設けて水門設備とトンネル付帯設備のCIMモデルの作成手順を盛り込む。地質・土質調査関係では、ボーリングモデルの形状・表示色・試験結果の表示などを整理し、統一化を図る。

 また、鋼橋上部工の工場製作の作業効率を高めるため、設計段階と工場製作段階のCIMモデルの交換標準作成にも着手する。

■直轄事業のCIM活用事例を報告

 国土交通省は11月21日に開いたCIM導入推進委員会の「CIM実施体制検討ワーキンググループ」で、直轄事業でのCIM活用事例を報告した。この中で、中国地方整備局は、ECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式を採用した「国道2号大樋橋西高架橋工事」にCIMを導入し、設計者と施工者が協力してCIMモデルを構築していることを報告した。

 中国地整は、ECI方式を採用した大樋橋西高架橋工事(岡山県)で、建設コンサルタントと施工会社が連携したCIMモデルを構築している。施工段階での活用を見据えたCIMモデルを作成できる他、施工者がCIMモデルを活用して技術提案を行えるといった効果が期待できるという。

 北陸地整は、全体事業費1200億円、事業期間18年に及ぶ「大河津分水路改修事業」(新潟県)にCIMを導入。複数の工事を同時に施工する大規模事業であるため、CIMモデルを活用して施工計画を効率的に作成する。九州地整は、管内4ダム工事にCIMを導入。維持管理段階でのCIMモデルの活用を視野に入れている。