国土交通省は、直轄工事でプレキャストコンクリート製品の利用を拡大する。直接工事費だけでなく仮設費を含めて現場打ちとのコスト比較を行うと、現場打ちよりもコスト的に優位になるとみている。ボックスカルバートで内空断面積40m2以下、擁壁で壁高5m以下の施工で、プレキャスト製品を積極的に採用する。また、いわゆる〝ハーフプレキャスト〟の現場施工を効率化する「プレハブ鉄筋」と「埋設型枠」のガイドラインを2017年度中にまとめ、採用時の要求性能と品質規定を定める。
コンクリート工の生産性向上は、建設現場の生産性を高めるi-Constructionの3本柱の一つ。国交省は、2017年度から、機械式鉄筋定着工法や機械式鉄筋継手工法のガイドラインを定めた他、現場打ちコンクリートのスランプ値を見直し、現場打ちコンクリートの生産性を高める措置を講じている。
同省は、現場打ちコンクリートの生産性向上に続き、プレキャスト製品の利用を拡大し、コンクリート工全体の生産性向上を狙う。10月10日に開いた「コンクリート生産性向上検討協議会」でもプレキャスト製品の利用拡大について提案した。
ボックスカルバートと擁壁については、これまで直接工事費のみで現場打ちとプレキャスト製品のコストを比較していたため、プレキャスト製品の採用は小型製品に限られていた。ただ、プレキャスト製品の採用は、仮設工の省略にもつながるため、コスト比較で仮設費を考慮するよう積算方法を整理する。
さらに、現場の生産性向上を図る政策的な措置として、現場打ちの1.1倍程度のコストを許容範囲と位置付け、ボックスカルバートで内空断面積40m2以下、擁壁で壁高5m以下については、積極的にプレキャスト製品を採用する方針を示した。これにより、ボックスカルバートで見ると、現状で70%程度のプレキャスト製品の採用率は20ポイント程度上昇する見込みだという。
プレキャスト製品については、部材の規格を標準化することで、大型構造物への利用拡大も検討する。橋梁部材のプレキャスト化・標準化を目指し、設計手順や照査方法を定めたガイドラインを17年度末までに策定。
同じく17年度末には、「プレハブ鉄筋」と「埋設型枠」のガイドラインもまとめ、現場作業の一部を工場作業化し、現場への搬入・仮設後に中詰めコンクリートを打設するハーフプレキャストによる現場施工の効率化を図る。
■生コン情報の電子化、直轄現場で試行
国土交通省は、生コンクリートの出荷・到着・打設時刻を関係者で情報共有する現場の試行を開始する。製造者、施工者、発注者がウェブサーバーを通じて生コン情報をリアルタイムで確認し、最適な搬送計画やデータ整理の効率化につなげる。直轄工事から試行現場を抽出し、最適な運用方法を検証する。
生コンクリートの品質や出荷・到着・打設開始・打設終了時刻は、生コン工場で発行した紙伝票で情報を伝達している。現場での試験結果や運搬状況はリアルタイムでやりとりできず、現場や工場での情報伝達に時間が掛かり、コンクリート打設に手戻りが生じる要因にもなり得る。
これに対し、国交省は10月10日の「コンクリート生産性向上検討協議会」で、生コン情報を電子化し、関係者で情報共有することを提案。ウェブサーバーを通じた情報ネットワークを構築し、発注者・施工者・製造者が生コンの出荷から打設までの情報を共有することで、手戻りのない搬送計画や打設後のデータ整理の効率化につなげる考えを示していた。
今後、協議会に参加する日本建設業連合会(日建連)、全国建設業協会(全建)、全国生コンクリート工業組合連合会(ZENNAMA)と調整し、直轄工事から試行現場を選ぶ。生産工程を含めて情報を共有し、待ち時間のロスなどによる生産性の低下を防ぐ試みを開始する。