社保未加入問題に迫る!(1) 特定社会保険労務士 杉山 晃浩
平成24年から始まった建設業における社会保険未加入対策は、5年間の準備期間を経て、平成29年度には本格的な取り組みに移行する。
株式会社、有限会社などの法人では、法令に基づいて健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険(以下、「社会保険」という。)の適用を行わなければならない。社会保険以外にも、企業には、子ども・子育て拠出金を支払う義務がある。
社会保険を適用すると企業は、役員報酬・従業員給の与総額に対して約16%(平成28年9月度・宮崎県)もの社会保険料を負担しなければならない。適法に社会保険の適用している企業が、違法に社会保険を適用していない企業と競争すれば、社会保険を適用していない企業の方が競争上有利になるのは明らかである。これが社会保険未加入問題であり、このような不公正な競争状態が長く続いてきたのである。
実は社会保険料の時効は2年間であるため、社会保険未加入企業が行政から強制的に社会保険適用手続きを執行されたとしても、最大2年間の社会保険料とその利息を支払えば、2年より前の社会保険料の負担から逃れられたのである。
従業員の社会保険被保険者取得には一定のルールがあるが、アルバイトだから、いつ辞めるかわからないから、などと理由をつけて手続きを行わない企業があるのも事実である。しかし、コンプライアンス(法令順守)が声高に叫ばれるようになった世の中で、このような状況を野放しにしておくのは許されることではない。
政府の目標は、平成29年度に企業単位で建設業許可業種の加入率100%である。そのために、次の4つの取り組みが行われる。
1.社会保険加入に向けた対策の強化
2.法定福利費の確保
3.加入すべき対象の明確化
4.相談体制の充実、周知・啓発
建設業界における元請企業の権限は非常に大きい。よって、発注者と元請企業間で決定される請負金額、工期などは、二次下請以下の企業に大きな影響をあたえるのである。元請企業が利益を大きく取れば、二次下請以下の企業の利益を圧迫してしまい、業界の健全化に悪い影響を及ぼしてしまう。
これからの元請企業が社会的責任を果たすためにも、工事請負契約に関わる二次下請以下の企業に対して、“適正な契約の締結”、“適正な施工体制の確立”、“雇用・労働条件の改善”、“福祉の充実”などについて助言・指導などの援助を行わなければならない。すなわち、二次下請以下の企業に対して、社会保険の講習会などの周知啓発活動や加入勧奨、加入状況の監督を行い、違法な下請企業を協力会社と出来なくなるのである(次回に続く)。
社会保険加入等に関する問合せは、合資会社オフィススギヤマ・電話0985-38-1418番まで。
なお、来たる2月14日(火)の午後7時から90分間、「社会保険加入セミナー」をオフィススギヤマのMIYAZAKIベース(宮崎市吉村町寺ノ前甲2882-184)で開催する。「建設新聞」購読者は受講料無料。定員は先着順で14名。申込み・問合せは、0985-38-5555(担当:佐々木)まで。